日本にベンチャーが無い理由

この日本で本当にシード段階の投資が出来るのか(社長日記 -メビック編- (83))

日本でベンチャーと名乗っている会社は、コントロール目的の個人中小企業か、大手の子会社だけである。アメリカで言うようなベンチャーではない。その原因の一つはキャピタルやエンジェルがアメリカで言うようなキャピタルやエンジェルではないからである。

リンク先を見れば分かると思うが、キャピタルやエンジェルのスタンスがアメリカと日本ではまるで違う。日本で資金調達する場合は、実質的に資金調達先の子会社になるか、中小企業への融資という扱いしかない。日本でベンチャーキャピタルといっているところは資金を出す代わりにコントロールを要求する。また、助言や紹介があったとしてもしがらみに依存した助言に終始することになる(市場における優位性判断ではなく自分の元々いた企業の関連企業を薦めるなど)。また、中小企業への融資という形は、過去の実績を見て金を出すわけであり、これからというベンチャーには適さない。

アメリカで言うような本来のキャピタルやエンジェルはアイデアに対する投資であり投機に近いものである。特にエンジェルは社会貢献的意義目的に近いようである。助言はしてもコントロールは要求せず、上場株式の10%を渡すだけとか。もちろん、アメリカであろうが日本であろうが個々のキャピタルやエンジェルによって条件は異なるだろう。しかし、日本には本来の意味でのそれがほぼ存在しないことだけは明らかであろう。

これらの背景からどうなるかというと、アメリカではキャピタルやエンジェルから資金を調達し、リスク分をのせて高給与で要員を雇い、メインだけに注力し最大限のスピードとモチベーションで展開する。それに対して日本では、有志を募り薄給与で要員を雇う。運用資金調達のためにメイン以外の仕事も請ける。ということになる。しかし、薄給で優秀な人材を確保することは無理である。運がよければ超短期的には可能ではあるがそれは続くものではない。

そもそも、ベンチャーは特定分野の特定商品に特化しそれに注力して最大限の速度を出すことで、他社や既存企業からのアドバンテージを得る、さらに着目点が時代の波とタイミングが合った場合に成功できる。しかし、日本の現状における現実解の方法では最大限の速度を出すことは不可能である。少なくとも、アメリカのキャピタルやエンジェルから資金調達を行った企業には負ける。つまり、日本ではベンチャーは育たない。育つ前提の環境も無い。また、ロングテール戦略を取ろうにも、日本は市場規模も中途半端に狭いため、初めから世界展開を考えていないと話にならない。しかし、ここでもまた先行的資金が必要である。