日本のソフト業界のイメージ – 就職活動をする学生へ –

大抵、皆自分の今と未来の事で手一杯なので、自分にとって過ぎ去った事=次の世代に少し役に立つことなど語ることは少ない。が、少し良い傾向になってきたので書いておこうと思う。もちろん、業界全部が分かるわけではないが、自分の職場だけではなく友人や知り合いから耳にした職場の現状も踏まえて少し。

就職活動をする学生に言っておきたいことは2点。

  • この業界への評価としては現時点の学生の感性の方が正しい。
  • 本番に弱い人、基礎能力の低い人は就職活動は上手くいきません。

まず1点目について、
IT業界のネガティブイメージ – カレーなる辛口Javaな転職日記
J-CASTニュース : 「化粧のらない」「結婚できない」 IT業界就職不人気の理由
魅力回復は道遠し? ITサービス業界、学生の人気が低迷?ビジネス-最新ニ
IT業界不人気の理由は? 現役学生が語るそのネガティブイメージ

会社側のイベント、つまり会社説明会や就職斡旋企業のイベントやテレビで社員のネガティブな部分の本音が語られることはまずない。語られるのはポジティブな部分の本音発言と建前発言だけ。本音を聞きたければ、匿名のブログやこの業界からドロップアウトしていて自由な発言ができる人の言葉を探した方がいい。
ただ、同じネットだからといって、2chの情報を鵜呑みにはしないように。犯罪レベルでなれば匿名性が確保されているゆえ、本音を書き込む人は多い。ただし、商売敵の書き込みや、一方的な恨みで書いている者もいる。とは言え、少しも火がないところに大量の煙は上がらないので、個々の細かい要素が本当かどうかは別として、大局としては現状を正しく表している事は多い。
本音を書いてそうな匿名ブログにコメントで質問するのが一番本音を聞ける方法かもしれない。家族や知り合いに聞いても良いが、見栄がある人の場合は本音が語られることはない。重要なヒントはもらえるだろうが。

さて、このネガティブなイメージについて、なぜ「少し良い傾向」と書いたか。
需要と供給のバランスが適正なバランスにならないと適正な待遇にはならない。ということなのである。つまり、会社側は、IT業界に異常に人気があると、どんな悪条件で募集をかけても、どんなに悪条件で雇っていても、人がくるので、それでOKだと思ってしまう。
「辞めたい?じゃ辞めれば。代わりはいくらでもいるから?」
「新卒の3年以内の離職率が高いんです。→また新人が入ってくるから大丈夫。」
仕事は大変でも、新しい人がまた集まるから、まともな待遇にはならない。
ここで、応募側の学生が適切な情報と価値観を持つことにより、そのバランスが適正になるのである。

実際、最近そのバランスが適正に近づき、上の様な態度を会社が取れなくなってきたので少し焦っているだけなのだ。(要因としては少子化もプラスされてるけど。)

元々、ソフト業なんて趣味の範囲が被る人でなければ割りが合わない仕事で。儲かるからというイメージを理由に来る業界ではない。ただし、経営側の視点から、マージン業として考えた場合は確かに儲かる業界。

A.最終顧客と直接取引をし最終的なサービスやモノを提供する会社、メインは方針決定と調整にマネジメント(規模の大きな仕事を分割して下請けに外注)。(マトモな会社は少しマージン業。ナンチャッテな会社はモロマージン業)
B.実は偽装派遣な会社。使い捨て(*1)。(モロマージン業)
C.実際に動くコードを書く会社。(非マージン業)

ソフト業界は色々な分野があるのにそれを一緒くたにしてる時点で未だにダメダメ。
「創作和食」「会席料理」「寿司職人」「イタリアンシェフ」「フレンチシェフ」「パテシエ」「ショコラティエ」
料理を作るという意味では同じでも、必要な技術や環境、お客の目的や好みは全部違う。
日本のソフト業界大手は未だに建築業界のコピー方式がメイン。それで上手くいくのは一部の分野だけなのに。
その点については、ソフトウェアの仕様書は料理のレシピに似ているや、SEはメニューのないレストランのウェイターか?を読めば分かりやすい。

長くなったので、2点目については後日。

(*1)丁度良い記事があったのでリンク→ソフトウェア開発における初心者

日本にベンチャーが無い理由

この日本で本当にシード段階の投資が出来るのか(社長日記 -メビック編- (83))

日本でベンチャーと名乗っている会社は、コントロール目的の個人中小企業か、大手の子会社だけである。アメリカで言うようなベンチャーではない。その原因の一つはキャピタルやエンジェルがアメリカで言うようなキャピタルやエンジェルではないからである。

リンク先を見れば分かると思うが、キャピタルやエンジェルのスタンスがアメリカと日本ではまるで違う。日本で資金調達する場合は、実質的に資金調達先の子会社になるか、中小企業への融資という扱いしかない。日本でベンチャーキャピタルといっているところは資金を出す代わりにコントロールを要求する。また、助言や紹介があったとしてもしがらみに依存した助言に終始することになる(市場における優位性判断ではなく自分の元々いた企業の関連企業を薦めるなど)。また、中小企業への融資という形は、過去の実績を見て金を出すわけであり、これからというベンチャーには適さない。

アメリカで言うような本来のキャピタルやエンジェルはアイデアに対する投資であり投機に近いものである。特にエンジェルは社会貢献的意義目的に近いようである。助言はしてもコントロールは要求せず、上場株式の10%を渡すだけとか。もちろん、アメリカであろうが日本であろうが個々のキャピタルやエンジェルによって条件は異なるだろう。しかし、日本には本来の意味でのそれがほぼ存在しないことだけは明らかであろう。

これらの背景からどうなるかというと、アメリカではキャピタルやエンジェルから資金を調達し、リスク分をのせて高給与で要員を雇い、メインだけに注力し最大限のスピードとモチベーションで展開する。それに対して日本では、有志を募り薄給与で要員を雇う。運用資金調達のためにメイン以外の仕事も請ける。ということになる。しかし、薄給で優秀な人材を確保することは無理である。運がよければ超短期的には可能ではあるがそれは続くものではない。

そもそも、ベンチャーは特定分野の特定商品に特化しそれに注力して最大限の速度を出すことで、他社や既存企業からのアドバンテージを得る、さらに着目点が時代の波とタイミングが合った場合に成功できる。しかし、日本の現状における現実解の方法では最大限の速度を出すことは不可能である。少なくとも、アメリカのキャピタルやエンジェルから資金調達を行った企業には負ける。つまり、日本ではベンチャーは育たない。育つ前提の環境も無い。また、ロングテール戦略を取ろうにも、日本は市場規模も中途半端に狭いため、初めから世界展開を考えていないと話にならない。しかし、ここでもまた先行的資金が必要である。

改善?効率化?→最適化

「改善」だの「効率化」だの言われているが、実は「最適化」という言葉の方が適切。

「改善」と言われると「現状や今の手法が悪」と言われているようで嫌なイメージを与える。しかし、その時点ではそれが現実的最適解だった。ただ今の環境が変化した為に今の環境に合っていないだけ。だから、今の環境と1、2年先の環境を考えて最適化をすれば良い。つまり、「今までの方法」が悪ではなく、「最適化を行う時間を割かなかったこと」が悪ということ。時間を割く決定権者の怠慢を責任転換してるようではダメなのさ。

「効率化」はやりすぎに気をつけないとダメ。「最適化」という言葉に置き換えるとわかりやすい。最適化すると、想定内のことには最適な反応ができるが、想定外のことには対応できなくなる。つまり、効率化しすぎると変化に対応できなくなる。

「改善」「効率化」→時間短縮→人件費削減 という単純思考に陥る人にはこの考え方が必要。